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WOOLRICH OUTDOOR LABEL DAIKANYAMA Pt.1
鰤岡力也に学ぶ、ショップデザインの極意。ウールリッチの新店の魅力はどこに?

Dec 26, 2023

都会の中で感じられる「自然の温もりと街との共存」。



「自然の温もりと街との共存」。これは、「ウールリッチ アウトドアレーベル ダイカンヤマ」が掲げるコンセプト。瀟洒な街並みが広がる代官山を歩き、お店の中に一歩足を踏み入れると、大人の落ち着きと木のぬくもりを感じられる空間が広がります。
2フロアからなる店内は、1階と2階でどことなく雰囲気が変わるところもポイント。統一感があるのに、ちょっとしたムードの変化を感じさせるのは、細かな部分にこだわってデザインされているからに他なりません。
その詳細を知るべく、ストアデザインを担当した「モーブレーワークス」の鰤岡力也さんに、ショップを案内してもらいました。

わがままを押し通した贅沢な空間。

「カントリーをベースにした、クラシックな雰囲気がもともと好きなんです。アメリカの田舎に住むひとたちが、都会やモダンなものに憧れながら暮らしているような感じ。このお店も、そうしたムードにしたかったんです」

ショップデザインを手掛けるにあたってどんなイメージで臨んだのか? そんな質問に対して真摯に答えをくれた鰤岡さん。自身の工房である「モーブレーワークス」も、木材を使った丁寧な手仕事に定評があります。
「まずこだわったのが素材です。ベースとして採用しているのがホワイトオークという楢の木。ラックには真鍮を使って、重厚な雰囲気が視覚的にも伝わるようにしました」
こちらは一階中央にある什器。この棚の奥にもホワイトオークを使っています。一般的には簡素化されてしまう部分もしっかりとこだわるのが鰤岡さんの持ち味。今回のストアデザインに関しても一切の死角はありません。
「左官仕上げの壁面にも注目してほしいです。というのも、左官屋さんの提案で材料にウールを混ぜました。そこに少し赤みのある色を加えて、木材との調和を図っています。ウールを混ぜるのは初の試みだったんですが、〈ウールリッチ〉を意識した、いい感じの表情になりましたね」
ただ単にオーク材を基調にするなら簡単なこと。だけど、“素材の使い方” に鰤岡さんならではのこだわりがあるのです。例えばいま話してくれた左官仕上げも然りですが、一番象徴的なのが階段の板の部分。

「ここを見ると分かると思いますが、すごく分厚い板を使っています。普通の店ではここまで厚いものを使いません。それは予算がかかるから。だけどここでは、わがままを押し通してデザインさせてもらいました。階段を登っていると感じると思うんですが、木の感触の奥行きみたいなものが足から伝わってくるんです」
「フロアのタイルもイタリアから取り寄せた、本物の石を使ったものです。端の部分をあえて露出させることで、その厚みが伝わるように工夫しています」

それぞれの箇所に足を乗せると、その感触の豊かさが伝わってくるのは不思議なもの。言われなければ気づかない些細なポイントではあるけれど、「無意識に働きかけるなにかがある」という鰤岡さんの言葉に説得力を感じます。
2階に上がると、ホワイトオークを贅沢に使用した落ち着きのある空間が広がります。ここにも鰤岡さんならではの手仕事が光るポイントがいくつもあります。
注目してほしいのはモールディングと呼ばれる、凹凸で魅せる装飾の部分。壁面の上下にあしらわれた巾木(はばき)と、ドアの枠に施されています。
「ドア枠の一番端の部分が少しだけ窪んでいるのが見えますか? ここは自分で専用の刃物をつくって削りました。市販のものではこれができなくて、わざわざこのドア枠のためだけに刃物屋さんに行って道具をオーダーしたんです」

アメリカやヨーロッパではモールディングを施すのが一般的なため、工具店ではそれ用の道具が充実しているようですが、日本にはほとんど売っていないそう。魅力的なデザインにするため、道具までつくってしまうとは流石のひと言です。
ちなみに今回の作業で鰤岡さんが「一番時間がかかった」というのが、巾木をつくる作業。もともと大きな柱が何本もある建物のため、それを覆う巾木はアールを描くように制作しなければなりません。「これをつくるのに10日間くらいかかりました」とのこと。

「アールをつくるのに型をとらないといけないので、ベニアで型をつくって、ホワイトオークを2ミリに削って、それを接着剤と一緒にミルフィーユ状に何層にも重ねたんです。実はこの型作りが大変でした。だけど、それもこの店のため。一回しか使わないけど、がんばりました(笑)」

profile

鰤岡力也

MOBLEY WORKS代表1976年、東京生まれ。大学を卒業し、福祉の仕事に就いた後、家具や内装の仕事に興味を抱き、古材などを扱う「ギャラップ」に入社。そこで経験を積んだ後、独立し、「モーブレーワークス」をスタート。家具をメインに、店舗の内装なども手掛ける。
Instagram:@mobleyworks

Edit_Yuichiro Tsuji, Ryo Muramatsu

Photo_Yuya Wada

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  • WOOL COAT

    ¥68,200 (tax in)

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鰤岡力也に学ぶ、ショップデザインの極意。ウールリッチの新店の魅力はどこに?

Dec 26, 2023

都会の中で感じられる「自然の温もりと街との共存」。


「自然の温もりと街との共存」。これは、「ウールリッチ アウトドアレーベル ダイカンヤマ」が掲げるコンセプト。

瀟洒な街並みが広がる代官山を歩き、お店の中に一歩足を踏み入れると、大人の落ち着きと木のぬくもりを感じられる空間が広がります。
2フロアからなる店内は、1階と2階でどことなく雰囲気が変わるところもポイント。統一感があるのに、ちょっとしたムードの変化を感じさせるのは、細かな部分にこだわってデザインされているからに他なりません。

その詳細を知るべく、ストアデザインを担当した「モーブレーワークス」の鰤岡力也さんに、ショップを案内してもらいました。

わがままを押し通した贅沢な空間。


「カントリーをベースにした、クラシックな雰囲気がもともと好きなんです。アメリカの田舎に住むひとたちが、都会やモダンなものに憧れながら暮らしているような感じ。このお店も、そうしたムードにしたかったんです」

ショップデザインを手掛けるにあたってどんなイメージで臨んだのか? そんな質問に対して真摯に答えをくれた鰤岡さん。自身の工房である「モーブレーワークス」も、木材を使った丁寧な手仕事に定評があります。
「まずこだわったのが素材です。ベースとして採用しているのがホワイトオークという楢の木。ラックには真鍮を使って、重厚な雰囲気が視覚的にも伝わるようにしました」
こちらは一階中央にある什器。この棚の奥にもホワイトオークを使っています。一般的には簡素化されてしまう部分もしっかりとこだわるのが鰤岡さんの持ち味。今回のストアデザインに関しても一切の死角はありません。
「左官仕上げの壁面にも注目してほしいです。というのも、左官屋さんの提案で材料にウールを混ぜました。そこに少し赤みのある色を加えて、木材との調和を図っています。ウールを混ぜるのは初の試みだったんですが、〈ウールリッチ〉を意識した、いい感じの表情になりましたね」
ただ単にオーク材を基調にするなら簡単なこと。だけど、“素材の使い方” に鰤岡さんならではのこだわりがあるのです。例えばいま話してくれた左官仕上げも然りですが、一番象徴的なのが階段の板の部分。

「ここを見ると分かると思いますが、すごく分厚い板を使っています。普通の店ではここまで厚いものを使いません。それは予算がかかるから。だけどここでは、わがままを押し通してデザインさせてもらいました。階段を登っていると感じると思うんですが、木の感触の奥行きみたいなものが足から伝わってくるんです」
「フロアのタイルもイタリアから取り寄せた、本物の石を使ったものです。端の部分をあえて露出させることで、その厚みが伝わるように工夫しています」

それぞれの箇所に足を乗せると、その感触の豊かさが伝わってくるのは不思議なもの。言われなければ気づかない些細なポイントではあるけれど、「無意識に働きかけるなにかがある」という鰤岡さんの言葉に説得力を感じます。
2階に上がると、ホワイトオークを贅沢に使用した落ち着きのある空間が広がります。ここにも鰤岡さんならではの手仕事が光るポイントがいくつもあります。
注目してほしいのはモールディングと呼ばれる、凹凸で魅せる装飾の部分。壁面の上下にあしらわれた巾木(はばき)と、ドアの枠に施されています。
「ドア枠の一番端の部分が少しだけ窪んでいるのが見えますか? ここは自分で専用の刃物をつくって削りました。市販のものではこれができなくて、わざわざこのドア枠のためだけに刃物屋さんに行って道具をオーダーしたんです」

アメリカやヨーロッパではモールディングを施すのが一般的なため、工具店ではそれ用の道具が充実しているようですが、日本にはほとんど売っていないそう。魅力的なデザインにするため、道具までつくってしまうとは流石のひと言です。
ちなみに今回の作業で鰤岡さんが「一番時間がかかった」というのが、巾木をつくる作業。もともと大きな柱が何本もある建物のため、それを覆う巾木はアールを描くように制作しなければなりません。「これをつくるのに10日間くらいかかりました」とのこと。

「アールをつくるのに型をとらないといけないので、ベニアで型をつくって、ホワイトオークを2ミリに削って、それを接着剤と一緒にミルフィーユ状に何層にも重ねたんです。実はこの型作りが大変でした。だけど、それもこの店のため。一回しか使わないけど、がんばりました(笑)」

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鰤岡力也

MOBLEY WORKS代表1976年、東京生まれ。大学を卒業し、福祉の仕事に就いた後、家具や内装の仕事に興味を抱き、古材などを扱う「ギャラップ」に入社。そこで経験を積んだ後、独立し、「モーブレーワークス」をスタート。家具をメインに、店舗の内装なども手掛ける。
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